動画配信サービスの代名詞とも言えるネットフリックス。コロナ禍では多くの人が自宅で映画やドラマを楽しみ、株価も急上昇しました。しかし最近では競合他社の参入が相次ぎ、成長の鈍化も指摘されています。
そんな中、投資家の間では「ネットフリックス株はまだ買いなのか」という議論が活発になっています。確かに一時期ほどの勢いはないものの、実は水面下では着実に事業基盤を強化している面もあるのです。
今回は動画配信業界の現状を踏まえながら、ネットフリックス株の投資価値について詳しく見ていきましょう。競合との比較や収益構造の変化、そして将来のリスクまで、投資判断に必要な情報をわかりやすくお伝えします。
ネットフリックス株は今が買い時?現在の株価状況をチェック
2024年の株価推移で見えてきた回復の兆し
ネットフリックス株は2022年に大きく下落した後、2024年に入ってから回復傾向を見せています。実は2022年の株価下落は一時的なものだったことが、今振り返ると分かります。
当時は会員数の減少や競合他社の台頭で「ネットフリックスの時代は終わった」という声も聞かれました。しかし2024年の決算を見ると、会員数は再び増加に転じ、売上高も順調に伸びています。
株価の回復を支えているのは、広告付きプランの導入やパスワード共有対策の成功です。これらの施策により、実質的な収益力が向上したことを投資家が評価しているのです。
会員数の伸び悩みから脱却できた理由
ネットフリックスが会員数の伸び悩みから脱却できた背景には、戦略の大幅な見直しがあります。従来の「とにかく会員数を増やす」という方針から、「一人当たりの収益を上げる」方向にシフトしたのです。
具体的には、パスワードを家族以外と共有している利用者に対して追加料金を求める仕組みを導入しました。これにより、実質的に一つのアカウントで複数世帯が視聴していた状況が改善されています。
さらに広告付きの低料金プランを新設することで、価格に敏感な層の取り込みにも成功しています。この結果、会員数だけでなく平均収益も同時に向上する理想的な成長軌道に戻りつつあるのです。
他の動画配信株と比べて割安?割高?
ネットフリックス株のバリュエーションを他の動画配信関連株と比較すると、実はそれほど割高ではないことが分かります。たとえばディズニー株やワーナー・ブラザース・ディスカバリー株と比べても、PER(株価収益率)は同程度の水準です。
ただし注意したいのは、ネットフリックスは純粋な動画配信会社である点です。ディズニーのようにテーマパークや商品販売など他の収益源を持つ企業とは、リスクの分散度が異なります。
一方で、動画配信事業に特化していることは強みでもあります。経営資源を集中投下できるため、コンテンツの質や配信技術の向上スピードでは他社を上回る可能性が高いのです。
動画配信戦争でネットフリックスが勝ち残れる3つの理由
オリジナル作品への投資額が桁違い
ネットフリックスの最大の強みは、オリジナル作品への投資規模です。年間のコンテンツ投資額は約170億ドル(約2兆5000億円)に達し、これは他社を大きく上回る金額です。
この巨額投資により、「ストレンジャー・シングス」や「イカゲーム」のような世界的ヒット作品を数多く生み出しています。こうした独占コンテンツは、他のサービスでは視聴できないため、会員の解約防止に大きな効果があります。
実は映画やドラマの制作には時間がかかるため、今投資した内容が収益として現れるのは1〜2年後になります。つまり現在の高い投資額は、将来の競争優位性を築くための先行投資と考えることができるのです。
全世界展開のスケールメリットが効いている
ネットフリックスは190以上の国と地域でサービスを展開しており、このグローバル規模が大きなメリットを生んでいます。一つのコンテンツを世界中で配信できるため、制作費を効率的に回収できるのです。
たとえば韓国で制作された「イカゲーム」は、アメリカやヨーロッパでも大ヒットしました。このように、ローカル制作のコンテンツをグローバルに展開することで、投資効率を最大化しています。
競合他社の多くは特定地域に強みを持つものの、ネットフリックスほどの全世界展開は実現できていません。この規模の差は、コンテンツ調達力や配信インフラの面で明確な優位性となって現れています。
データ活用でユーザーの心を掴む仕組み
ネットフリックスは視聴データの活用において、業界をリードする存在です。ユーザーの視聴履歴や途中で止めた位置、早送りした場面まで詳細に分析し、コンテンツ制作に活用しています。
この膨大なデータを基に、「どんな作品がヒットするか」「どんなジャンルが求められているか」を予測する精度が年々向上しています。実際、ネットフリックス制作のオリジナル作品の成功率は、従来のテレビ業界よりもかなり高くなっています。
さらに個々のユーザーに最適化されたレコメンド機能により、満足度の高い視聴体験を提供できています。これが会員の継続率向上につながり、安定した収益基盤を支えているのです。
気になる競合他社の動き – Disney+やAmazonに負けていない?
Disney+との会員数競争の現状
Disney+は2019年のサービス開始からわずか数年で1億人を超える会員を獲得し、急成長を遂げました。しかし最近では成長ペースが鈍化しており、ネットフリックスとの差は再び広がりつつあります。
実はDisney+の会員数には、インドの格安サービス「Hotstar」の利用者が多く含まれています。この部分を除くと、高収益な欧米市場ではネットフリックスが依然として優位を保っています。
またディズニーは家族向けコンテンツに特化しているため、大人向けの幅広いジャンルをカバーするネットフリックスとは棲み分けができている面もあります。両社が激しく競合するというよりは、それぞれ異なる視聴者層を獲得していると見る方が適切でしょう。
Amazon Prime Videoの脅威度を分析
Amazon Prime Videoは、Amazonプライム会員の特典として提供されているため、単純な会員数比較は難しい状況です。ただし動画配信専業のネットフリックスと比べて、コンテンツ投資額はまだ限定的です。
Amazonの強みは豊富な資金力と、EC事業との連携可能性です。たとえば人気ドラマに登場する商品をすぐに購入できるような仕組みを構築すれば、新たな収益モデルが生まれる可能性があります。
しかし現時点では、Prime Videoは「Amazonプライム会員を増やすための手段」という位置づけが強く、動画配信事業単体での収益性はそれほど高くないと推測されます。
Apple TV+など新参組の影響は限定的
Apple TV+やParamount+などの新しいサービスも登場していますが、現在のところネットフリックスへの影響は限定的です。これらのサービスは高品質なオリジナル作品を制作しているものの、コンテンツの量ではまだネットフリックスに及びません。
Apple TV+は「テッド・ラッソ」などの話題作を生み出していますが、月額料金が安い分、コンテンツ投資額も抑えられています。このため長時間の視聴には向いておらず、ネットフリックスの補完的な位置づけになっているのが現状です。
新参組が今後大きく成長する可能性はありますが、少なくとも2〜3年の間は、ネットフリックスの地位を脅かすほどの存在にはならないでしょう。
ネットフリックスの収益構造 – なぜ利益が出るようになったのか
広告付きプランで収益の柱が増えた
ネットフリックスは2022年に広告付きの低料金プランを導入し、これが新たな収益源となっています。従来は月額料金のみの収益モデルでしたが、広告収入が加わることで収益構造が多様化しました。
広告付きプランの利用者は想定以上のペースで増加しており、2024年末には全会員の約30%を占めるまでになっています。興味深いのは、広告付きプランの利用者の方が視聴時間が長い傾向があることです。
これは広告収入の観点から非常に有利な状況です。視聴時間が長いほど広告の露出機会が増え、広告主にとっての価値も高まります。結果として広告単価の向上も期待できる好循環が生まれています。
パスワード共有対策で会員数が実質増加
ネットフリックスが実施したパスワード共有対策は、当初は会員の反発を招くのではないかと懸念されました。しかし実際には、多くのユーザーが追加料金を支払うか、新規アカウントを作成することを選択しています。
この結果、従来は一つのアカウントで複数世帯が視聴していた状況が改善され、実質的な会員数増加につながりました。たとえば大学生の子どもが実家のアカウントを使っていた場合、新たに学生プランに加入するケースが増えています。
パスワード共有対策による収益向上効果は、導入から1年以上経った現在でも続いています。これは一時的な施策ではなく、持続的な収益改善をもたらす構造的な変化だったことを示しています。
値上げへの理解が進んで単価アップ
ネットフリックスは定期的に料金の値上げを実施していますが、近年は会員の理解が得られやすくなっています。これは提供するコンテンツの質が向上し、サービスの価値が認められているからです。
実際、値上げ後の解約率は予想よりも低く抑えられています。多くの利用者が「月額数百円の値上げなら、品質の高いコンテンツを楽しめるなら納得できる」と考えているようです。
この傾向は特に先進国で顕著であり、平均収益の向上に大きく貢献しています。新興国では価格感度が高いため慎重な価格設定が必要ですが、欧米や日本などの成熟市場では今後も適度な値上げが可能と考えられます。
投資する前に知っておきたいリスク要素
コンテンツ制作費の高騰が続いている
ネットフリックスの最大のリスクは、コンテンツ制作費の継続的な上昇です。競合他社との差別化を図るため、年々投資額を増やす必要があり、これが利益率を圧迫する要因となっています。
特に人気俳優の出演料や監督の報酬は高騰が続いており、一つの作品に数百億円を投じるケースも珍しくありません。たとえば「ストレンジャー・シングス」の最終シーズンは、シーズン全体で約500億円の制作費がかかったと報じられています。
ただし投資額の増加に比例して作品の質も向上しており、視聴者満足度の向上につながっています。問題は投資効率が今後も維持できるかどうかであり、この点は継続的な監視が必要です。
経済不況時の解約リスクは無視できない
動画配信サービスは景気の影響を受けやすい事業です。家計が厳しくなると、娯楽費から削減されることが多く、ネットフリックスも例外ではありません。
実際、インフレが進行している国では解約率の上昇が観測されています。月額1000円程度の支出でも、家計が苦しくなれば「なくても困らないもの」として最初に削減対象になりがちです。
この点はネットフリックスも認識しており、広告付きの低料金プランを導入した背景の一つでもあります。しかし本格的な不況が到来した場合、会員数の減少は避けられない可能性があります。
各国の規制強化で事業展開に影響も
ネットフリックスはグローバル企業として、各国の規制変更リスクに直面しています。特にコンテンツの内容規制や、自国制作比率の義務化などが事業に影響を与える可能性があります。
たとえばヨーロッパでは、配信するコンテンツの一定割合を欧州制作にする義務があります。これによりコンテンツ調達コストが上昇したり、視聴者の嗜好と合わない作品を配信せざるを得ない場合があります。
また一部の国では、政治的な理由でサービス停止を余儀なくされるリスクもあります。こうした地政学的リスクは予測が困難であり、投資家としては分散投資の重要性を認識しておく必要があります。
アナリストの予想株価と投資判断をまとめてみた
大手証券会社の目標株価は強気?弱気?
主要な証券会社のアナリストレポートを見ると、ネットフリックス株に対する評価は概ね中立から弱い強気の範囲にあります。12ヶ月後の目標株価は現在の株価から10〜20%程度の上昇を見込む機関が多くなっています。
強気の理由として挙げられるのは、広告事業の成長ポテンシャルと、パスワード共有対策による収益改善効果の継続です。一方で弱気要因としては、競争激化による会員獲得コストの上昇が指摘されています。
興味深いのは、多くのアナリストが「短期的な株価上昇は限定的だが、長期的には堅実な成長が期待できる」という見方を示していることです。これは成熟した事業モデルの特徴とも言えるでしょう。
長期投資と短期投資でリターンはどう変わる
ネットフリックス株は、投資期間によってリスクとリターンの特性が大きく異なります。短期投資の場合、四半期決算の内容や競合他社の動向に株価が左右されやすく、ボラティリティが高くなります。
一方で長期投資の観点では、動画配信市場全体の成長と、ネットフリックスの市場シェア維持能力が重要になります。世界的にストリーミング視聴時間は増加傾向にあり、この長期トレンドは今後も継続すると予想されます。
過去10年間のネットフリックス株のパフォーマンスを見ると、短期的な変動はあったものの、長期保有した投資家は大きなリターンを得ています。ただし今後10年も同様の成長が続くかは不透明な部分もあります。
配当はないけど成長株として魅力的
ネットフリックスは現在配当を支払っておらず、今後も当面は配当開始の予定はありません。これは成長投資を優先しているためであり、多くの投資家もこの方針を支持しています。
配当がない代わりに、ネットフリックスは自社株買いを積極的に実施しています。これにより一株当たりの価値向上を図っており、株主還元の一形態として機能しています。
成長株投資を好む投資家にとっては、配当よりも株価上昇による値上がり益の方が魅力的です。特に税制面では、配当所得よりも譲渡益の方が有利な場合が多く、この点でもネットフリックスの方針は合理的と言えます。
2025年以降のネットフリックス株で注目すべきポイント
ゲーム事業参入で新たな収益源になるか
ネットフリックスは2021年からゲーム事業に参入しており、会員向けに追加料金なしでゲームを提供しています。現在のところ利用率はそれほど高くありませんが、将来的には重要な差別化要素になる可能性があります。
ゲーム業界は動画配信よりもさらに大きな市場規模を持っており、成功すれば収益の大幅な拡大が期待できます。またゲームは動画コンテンツよりも利用者の滞在時間が長く、エンゲージメント向上にも寄与します。
ただしゲーム事業は競争が激しく、AppleやGoogleなどの巨大企業も参入している分野です。ネットフリックスがこの領域で成功するには、独自性のあるゲーム体験を提供する必要があります。
ライブ配信やスポーツ中継の可能性
従来のネットフリックスはオンデマンド配信に特化していましたが、最近はライブ配信にも関心を示しています。特にスポーツ中継は視聴者を引きつける力が強く、会員獲得の有力な手段となり得ます。
実際に一部の地域では、スポーツイベントのライブ配信を試験的に開始しています。しかしスポーツ中継の放映権は非常に高額であり、収益性の確保が課題となります。
ライブ配信が軌道に乗れば、これまでのネットフリックスとは異なる価値提案が可能になります。ただし技術的な投資や人材確保など、乗り越えるべきハードルも少なくありません。
新興国での成長余地はまだまだ大きい
ネットフリックスの会員数は先進国では飽和に近づいていますが、新興国ではまだ大きな成長余地があります。特にインドや東南アジア、アフリカなどの人口の多い地域では、インターネット普及率の向上とともに潜在的な視聴者が増加しています。
新興国展開の課題は、現地の価格水準に合わせた料金設定です。先進国と同じ価格では普及が困難なため、大幅に安い料金プランの導入が必要になります。
しかし新興国の経済成長に伴って可処分所得が増加すれば、将来的には料金を段階的に引き上げることも可能です。長期的な視点で見れば、新興国市場は最も有望な成長エンジンと言えるでしょう。
まとめ
ネットフリックス株の投資価値を総合的に判断すると、短期的な爆発的成長は期待しにくいものの、長期的には安定した成長が見込める銘柄と言えます。動画配信市場での確固たる地位と、継続的な事業革新により、今後も業界をリードしていく可能性が高いでしょう。
投資を検討する際は、自身の投資スタイルとリスク許容度を十分に考慮することが重要です。配当収入を求める投資家には向いていませんが、長期的な資産成長を目指す投資家にとっては魅力的な選択肢の一つになるはずです。
最終的な投資判断は、市場環境の変化や個人の財務状況を踏まえて慎重に行ってください。ネットフリックスは確かに優良企業ですが、どんな投資にもリスクは伴うことを忘れてはいけません。

